YouTubeチャンネルにて『勉強会動画②』をアップロードしました。
今回は「空調配管」のドレン配管に関する基本的な設備知識が中心となります。
動画内で説明している内容の補足をスライド毎に簡易的に解説します。
内容は業界経験2年~5年生あたりが対象となります。
空調配管 ドレン配管
1.ドレン配管 基本編

基本的には空気中の水分が凝固した結露水のため、ドレン排水は比較的きれいな水です。
しかし空調機内を一度通るため、ホコリやカビ、スライムの付着により固着が原因で水漏れにつながることもあります。
バルコニーに放流することもありますが、環境によって赤カビやヌメりが生じることがあります。
後々のトラブルを避けるためにもドレンの排水先管理は非常に重要です。



施工管理での注意点ですが、空調ドレンの漏水はドレンアップの接続口が多くを締める印象です。
ドレンホースはメーカー付属品ですが、ドレンアップホースは別メーカーが発売しているものを使用するケースが多く、付属のホースを利用するかしないかも施工者によって変わるケースがあります。
ただし、接続口の微妙なサイズの違いから隙間が生じてしまったり、接続部を接着するかどうかも各メーカーの推奨条件やメンテナンスの考え方により変わってきます。
1か所トラブルが生じてしまうと全数点検にもなりかねません。
納まり的な面と品質管理の面からも、どのメーカーの材料を使用するのか、機器廻りの標準図を先に決めておくことが重要です。

「ドレン配管は汚水とは違い汚物がないため勾配を緩くしても問題ない」と考えがちです。
しかし流れにくい状態になるとホコリなどが部分的に蓄積し、滞留から漏水の危険度も可能性として高くなることもあるでしょう。
標準の排水勾配では50Aまでは1/50のため、「枝管だけは1/50としたい」「基本的に排水管として勾配選定する」など施工者によっても考え方は変わってきます。
一番大事なのは『1/50や1/100で検討した場合に、天井内に納まらない場所があるかどうか』です。
まずは条件を確認しつつ、一番最遠となる納まりが厳しい系統が問題ないか確認することがドレン配管作図の一丁目一番地になります。

ドレン配管の管径は比較的細いですが、保温を考慮すると50Aでも外径は100mmを超えてしまいます。
特に気を付けるべきは天井材や電気器具との干渉です。
特にダウンライトや非常照明は器具によって天井内の埋め込み代が150~200mmを超える場合もあります。
ドレンの勾配を考慮した場合に、下流側で器具に干渉するトラブルがよく生じるため、作図時には保温をしっかりと考慮しつつ、プロット図でドレンルートと他器具の干渉をチェックすることも大切です。


ACドレンパイプは役所の現場も含め広く使用が認められるようになってきたと聞きます。
しかし、ACドレンでの結露によるトラブル事例も同じく聞くことが増えた印象です。
そもそも保温が不要として施工性・施工工数削減による工期短縮・保温工事削減による工費削減など、管種変更を提案するメリットは多くあります。
ただし、メーカーの仕様書にも保温に関する注意事項が細かく記載されているため、施工管理に於いては十分な注意が必要です。
作図については、保温がいらないけどVP管よりも外径は大きくなるため、CADの設定で必ずACドレンに設定変更し作図をしておかないと、干渉に気付けない可能性があるため注意しましょう。

ドレン排水をどのように扱うかは土木事務所の確認が必要になります。
土木事務所のルールは衛生の外構配管の様々なルールも含め、地方自治体や所轄の考え方により異なる場合があります。
特にドレン排水を最終的に雨水につなげてよいか、浸透させてよいか、または汚水系統に必ず接続し排水する必要があるかなど、条件は様々です。
ただとにかく留意しないといけないのは「設計図で描かれているからOK」と情報を鵜呑みにしないことです。
排水の申請時に「ドレン放流はダメだよ」と言われ、内装工事中に慌てて施工図修正を余儀なくされるなんてことも。
設計時に事前協議やその地域のルールを把握していればトラブルは起こりにくいですが、まずは疑って確認することが設計者でも施工者でも、そして作図者としても大事な観点だと思います。




空調ドレンを汚水に接続する際に使用するトラップ材。
何も考えずに接続だけしてしまうと、汚水配管から臭気や虫がドレン配管内に侵入してしまいます。
エアコンから臭気が出てくるなんてトラブルは考えたくもないものです。
よくエアカットバルブを使用しますが、臭気の遮断率は100%ではないため、どの程度の考慮が必要になるかを確認することが大事です。
またふかし壁内やデットスペースのPS内でエアカットバルブを設置する場合、点検を考慮した検討が非常に大切になります。
エアカットバルブは常時のメンテナンスはありませんが、長期的に使用しているとホコリなどが詰まりチャッキ性能に不具合を生じる場合もあります。
その時にメンテナンスできる環境においておかないと、交換はおろかトラブルの原因確認も困難になってしまいます。
設計図では壁点検口まで考慮していない場合もよく見ます。
壁床プロット図でしっかりと明記し、必要な点検口を建築工事に要望するなどの対応が重要になります。
2.ドレン配管 作図編

このスライドを製作する上で管サイズの選定について私なりに色々と調べてみたのですが、明確な条件を謳っている教材が正直見つかりませんでした。
施工管理時代に上長から「設備手帳の便覧にある」と教わった記憶から資料を添付していますが、これも明確な空調機の仕様条件は記載がありません。
設計者や施工会社毎にドレンサイズのルールは異なる印象です。
竪管についても65Aや80Aを使用する現場もありますが、これも建物規模や使用用途により変わる印象です。
ただ、作図時はルート変更は当たり前に生じるため、最初に専用ルールがないかの確認と、特になければ基本条件を決めた上で作図するように心がけましょう。
建設業は全体的に「マイルール」が多く存在します。長年の経験とカンというものもあります。
特に経験の浅い方にはそんなもの教わらなければわかるはずがありません。
決まっていないなら決めてもらう。ただ、最初に伺いを立てて確認することこそが大切です。

天井内の配管を作図する際に、曲がりや末端の掃除口をどのように作図するか迷いませんか?
これも「マイルール」の感覚が大きい部分だと個人的には思います。
すべての曲がりをLTにして掃除口を設けるのもいいでしょう。
でも点検口を設けなければ、実際に点検ができなければあまり意味がありません。
曲がりをエルボにするよりもLTにした方がもしかしたら詰まりのリスクが上がるかもしれません。
「設計図で曲がりをすべて掃除口で描かれているからそのように作図してみた」こんなパターンもあるでしょう。
しかし、設計者は正直そこまで考えていない場合が多いです。たまたま曲がりをすべてLTで作図するルールの設計会社かもしれません。
現場のルールは現場で決めていきます。将来的な管理を考えて、どこまで点検できるようにするのか。
試験は通水試験なのか満水試験なのか。通水試験を行う上での管理として必要な掃除口があるか。
管理者はそれらを最初にルール決めし、作図のルールに落とし込むことが必要です。

建物の図面検討で一番初期に必要になるのが基礎スリーブの検討です。
最近、、、というほどではなく当たり前になってきていますが、検討作業から施工の乗り込みまでの時間が非常に短期の現場が多くあります。
地中梁スリーブの検討を超短期で対応するなんてことも日常茶飯事です。
地中梁なのでまずは衛生配管から確認して勾配やスリーブ条件を確認していきますが、その際によく見落としてしまうのが空調ドレン配管です。
ドレンはピット内に放流する場合もあれば、屋外まで単独で排水し汚水桝に接続する場合など設計により条件が変わります。
特に設計図を見ると空調設備図には「ピット図」が無い場合があります。
ただよく見ると配管のサイズに「ピット」と記載されていて、基礎スリーブが必要な場合も多くあります。
経験者にとっては当たり前の感覚ですが、正直経験が浅ければ見落としによるトラブルTOP5に入るのではないかと思うほどに、見落としがちな内容です。
ピットでも当然勾配が必要になるため、汚水管や通気管との交差で納まりが非常に厳しい場合も。
これは常に意識して確認するようにしましょう。
合わせて消火のスプリンクラー設備のドレン排水なども基礎スリーブに影響が出るもので同じように見落としがちな印象です。
是非基礎検討時にはよく確認する癖をつけましょう。

小口径のトラップ桝は意外と納まりが悪いと覚えておきましょう。
特に基礎の検討と合わせて外構配管の納まり確認が建物工事の中で一番初期に行う重要な作業です。
トラップ桝を付けることで全体の配管深さに影響が出て納まらなくなってしまうことも。

設計図で以外とあるのが上階系統とそのフロアの横引きを合流させている場合。
これもかなり色んな本を漁ってみたのですが、明確にNGのルールは記載がありませんでした。
排水設備と考えると、この施工は完全にNGです。
しかしドレンは汚物もなく排水量も場合によってはかなり少ないため、上記条件で接続してもトラブルにはならないかもしれません。
でもそれは誰が判断するのか。最終的な責任は施工者に行きつきます。
そのため、このような設計図になっていても設計意図や方針を質疑確認することが非常に重要です。
かなり大型の現場設計図でもこの事例は多く目にします。
ただし、安易にそれぞれを単独にしてしまうと、納まりや配管長の増にもつながります。
作図者は現場の増減・予算管理を行う立場でないことの方が多いです。
細かい話ですが、これも当たり前と捉えずに変更する必要があるかを早めに確認すること。
また「設計図がこうだから」と安易に設計図通りにしないこと。
体感的にですが、このような設計になっていても9割は「上階と下階の枝管は分ける」方針に落ち着く印象です。

ドレンアップの納まりも意外と見落としてしまうのと、これを見落とすと後々大きなトラブルにつながってしまう大事な注意ポイントです。
ドレンアップの高さはメーカーや機種により異なります。
特に納まり的に上流側を梁スリーブで検討すると、気付いたらドレンアップが納まっていなかったなんてことも。
しかし梁下にすると下流側が天井内に納まらない。レイアウトの変更やPS・竪管の追加要望が必要になる・・・
仮にドレンアップを別途増設するとなれば、機器の増と電気工事に追加依頼が必要になるため簡単に決められる話ではありません。
作図時に、空調機のレベルとドレンの最上流部のレベルを図面上に表記しておくとより分かりやすくなります。
またドレンアップは「上げてから少し下げて枝管に接続」が基本です。
最大850Hでも、水平に接続すると戻り水が生じてしまう可能性もあります。
100mm程度は余裕を見つつ、一番厳しい場所だけでも詳細図を起こして確認しましょう。


これもよくある失敗として作図時や図面チェックの際は最大限に注意してもらいたいポイントです。
初心者は特に「機器にはドレンアップがある」と勝手に思い込んで施工図を描いてしまいがちです。
しかし加湿系統は特にドレンアップが無い場合が多いため、その機器からの排水レベルが最上流となってしまいます。
ドレン配管以上に機器の納まりは全体のプロットやダクト・衛生配管により納まりの影響が生じることがあります。
最初に見込んでいたよりも機器が低くなり、結果的にドレンが納まっていなかった、なんてことも。
必ず仕様書にドレンアップの有無は記載されています。
また、厨房の空調機などはドレンアップが別途付属となっている場合もあります。
その際に機器表に「ドレンアップメカ」の記載が無いと、基本的には代理店が選定する仕様書リストに入ってきません。
機器に付属が当たり前だと思わず、追加で必要であれば増減に影響するため質疑確認をすることが必要になります。
天吊りの厨房空調機やルームエアコンはドレンアップせずに露出で床下にもっていく設計の場合もあります。
しかし意匠的な確認・施主の確認により方針が変わってしまう場合もあるため気を付けましょう。

屋上や屋外のドレンは設計図上に作図すらされていない場合が多い印象です。
しかしよくよく確認してみると「ルーフドレンまでは横引いてほしい」と言われることも。
屋上やバルコニーはメンテナンス通路の考え方が非常に大事になります。
ドレン配管は細くて誤って踏んでしまうと割れてトラブルになりかねません。
バルコニーの場合はドレンレールを建築に要望したり、屋上の場合はメンテ導線を明確にして配管ルートを避けるように検討することが大切です。
動画の内容とはまた違った側面で記事を書いていますので、動画と合わせてご確認いただければと思います。
次回動画は「ダクト設備 基本編」を2025年9月24日(水)更新予定です。
この度、YouTubeにて「建築設備の図面屋さん」チャンネルを新規開設いたしました。
https://www.youtube.com/channel/UCQppktUn44lnEoW3DlrE7qg

このチャンネルでは、建築設備の勉強会、設備CADの操作知識、資格試験の解説に関する動画などを公開していく予定です。
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