YouTubeチャンネルにて『勉強会動画⑩』をアップロードしました。
今回は「マンション工事」に関連する衛生設備の紹介をしていきます。
建築・設備工事は建物の用途によって特徴的な設備や考え方があるため、施工に携わる機会があれば一つのポイントとして確認してみてください。
動画内で説明している内容の補足をスライド毎に簡易的に解説します。
内容は業界経験2年~5年生あたりが対象となります。
目次
マンション施工における衛生設備
1.架橋ポリエチレン管と施工



マンションの各住戸系統の給水・給湯配管、またガス配管は基本的に床下のスペースを利用して配管を行います。
マンションは一般的な事務所ビルなどと比較すると、階高を極力低く設計するため天井内や床下のふところも最低限しか設けません。
架橋ポリエチレン管を使用することで配管が比較的自由に展開できるため、ほとんどのマンション工事で採用されます。
事務所ビルや商業施設などでは一部の器具回りに使用することもありますが、使用が許可されない場合もあるためマンションなどの住居設備特有の配管とも言えます。
配管自体の支持も樹脂バンドにてスラブに直接接着や簡易的なピン止めで固定します。
事務所ビルの床下配管とは仕様が大きく異なるため、あまり携わったことが無い場合、まずはイメージを持つことが大切です。
CAD上ではフレキ管で作図することができますが、配管の交差やレベルなどはナリで施工してしまうことも多く、場合によっては二次元的な検討のみで十分な場合もあります。
架橋ポリエチレン管の工法には大きく「ヘッダー工法」と「分岐工法」があります。
作図上の注意点としては、ヘッダー工法の場合はヘッダー廻り、分岐工法の場合は分岐部が無理な曲がりや取り回しにならないように留意することが大切です。
フレキ管は無理な曲がりをすると管の亀裂など損傷につながる可能性があります。また交差部も複数系統が複雑に交差してしまうと施工性がかなり悪くなります。
無理のない範囲で配管の曲がりを設けながら、極力シンプルに配管展開ができるように作図検討しましょう。
2.マンションの排水と下がりスラブの確認



マンション設備の排水管は一般的に「集合管」を使用します。
排水管は各住戸の床下・スラブ上のスペースを利用し展開するのですが、通常の継手では竪管接続廻りの納まりで広めのPSが必要になり、一般的な配管工法で施工してしまうとループ通気や竪管通気が必要になります。
集合管を使用することにより、竪管に対して床下配管を複数方向から接続できるだけでなく、通気配管を省略することができるため、PSの範囲も最小限に抑えることが可能になります。
集合管は排水の流れを管内の外側にらせん状に作るための特殊な構造になっているため、一般的な分岐継手よりもかなりサイズが大きくなります。
スラブ上に埋め込む形で施工する必要があるため、床スリーブの検討や下階の納まりには十分留意する必要があります。
集合管を使用する系統の最下階には「脚部継手」を使用する必要があります。
脚部継手と集合管との納まりによりスラブからの最上流高さが決まるため、天井内の場合は天井高さの納まり、ピットの場合は地中梁スリーブや外構配管とのレベル確認が重要になります。
また脚部継手以降の横引き管は”横主管”扱いとなり、管サイズは専用に排水計算が必要になりますが、基本的には竪管よりもサイズが大きくなるため留意が必要です。
住居内の床下配管についても、配管が展開する範囲と構造設計の下がりスラブの範囲に整合が取れていない場合があります。
構造的な問題は早期に解決する必要があるため、マンション工事での大事なポイントとして、床下排水管が納まるかを早期に確認しましょう。
特にマンションのレイアウトはパンフレットデザインで方向性が早めに決定してしまい、要望しても意匠的に変更が困難な場合もあります。
住居内の意匠や構造に関わる懸念事項を早期に整理し建築や設計者と協議するようにしましょう。
3.メーターボックスとPSの点検口


マンション設備には「メーターボックス」と呼ばれる配管スペースがあります。
一般建物の「PS」と同じようなものになりますが、マンションの場合は各住戸毎に給水、ガス、電気など専用メーターが必要になり、それらを検針できるように共用部に個別にメーターボックスを設けます。
MB内には給水・ガス配管の竪管を設け、各階で枝管を分岐させメーターを設けます。
複数室を一つのMBで管理する場合は、その部屋の系統分だけメーターを設置する必要があり、扉を開けて点検が容易にできるように考慮することが大切になります。
MB内の床排水を設計する場合もあり、竪管と各階の分岐枝管が必要になります。
MB内には他にも電気メーターと電気用の配管や、扉に給湯器・消火器を設置する場合もあるため、必要な設備をそれぞれ整理しメンテナンスを考慮して検討することが大切です。
室内には排水管やドレン管のためにMBとは別に必要箇所にPSを設けます。
基本的には扉を設けるようなPSではないため、必要に応じメンテナンス用に壁点検口を設置しますが、棚や家具類などを考慮し点検口の設置面や高さを確認することが大切です。
意匠設計図にて点検口の位置や高さなどが検討されていることも多いですが、設備側の納まりと整合しない場合もあるため、プロット図にて配置を確認し必要に応じて設備要望を建築や意匠設計に確認していきましょう。
4.洗濯機パンと水栓


排水管のためにスラブが下がっている場合でも、梁の高さがスラブと異なり上がっている場合もあります。
洗濯機パンの排水は床下配管スペースがあれば問題ありませんが、梁に干渉する場合や下がりスラブになっていない場合などは、配管の接続スペースを床上で設ける必要があります。
通常の洗濯機パンは平型タイプのものですが、配管スペースを設けたかさ上げタイプや、建築工事にて配管スペース用にハカマを設ける場合もあります。
特に1階だけスラブを下げずにピット内配管にて設計している建物の場合に、配管の接続スペースが考慮されておらず意匠確認が必要になることもあります。
これはマンション工事に限らず、むしろ一般的な建物の場合に床下配管スペースが無いため器具の仕様変更やハカマの要望が必要になる場合が多く、設備検討する上での注意ポイントとなります。
洗濯機には専用の洗濯水栓が必要になります。
洗濯水栓の高さや設置面については施主毎に決められている場合もあるため、プロット図などで早めに確認しておきましょう。
また水栓高さは洗濯機設置の床仕上げ面からの高さを基準とするようにしましょう。
FLなどを基準とした場合、通常タイプとかさ上げタイプが混在する場合、場合によっては洗濯機と水栓が干渉してしまい納まらなくなる可能性があるため要注意です。
5.吸排気弁

マンションの給水配管の竪管頂部には「吸排気弁」を設置します。
これは”自動エア抜き弁”とは異なるもので、配管内が負圧にならないように空気を吸い込む役割を持ちます。
吸排気弁を設置する場合、動作時に排水が生じる可能性があるため、排水管への配管接続が必要になります。
MB内にMB用の床排水管を設けている場合はそちらに接続が可能ですが、無い場合は専用に排水竪管を最上階まで設けるか、または居室内の床下排水管から分岐し接続させるパターンなどがあります。
特に設計図で排水が考慮されていない場合、排水処理が床スリーブなどに影響が出る場合もあるため早めに確認しておきましょう。
6.ガス給湯器

ガス給湯器はMBに設置する場合もありますが、多くのレイアウトではバルコニーに設置されるパターンが多いです。
MBから給水・ガス配管を住居内の床下または天井からバルコニーまで配管を展開し、外壁にスリーブを設置し配管を接続し、ガス給湯機からは給湯配管や追い炊き配管などを室内側に展開します。
配管の壁貫通高さや納まりは、ガス給湯器の設置位置と高さを決める必要があるため、バルコニー側のプロット検討が重要になります。
特に外気取り入れ口のベントキャップや室外機との納まりなども影響する可能性があるため、できれば部屋パターン毎に外壁面の展開プロット図を作成し確認しましょう。
またガス給湯器は設置条件として、隣接する可燃物からの必要離隔条件が定められています。
メーカーの施工要領書に規定寸法が明記されているため、必ず確認しておきましょう。
給湯器の配管は専用の配管カバーを設けて隠す場合がほとんどですが、外壁の電気コンセントの配置によってもスリーブ位置が変わってきます。
まずは設備が主体となり早めに図面に落とし込んでいくことが大切です。
7.建築工事との調整 住設家具や駐輪場


衛生設備は本工事で設置する衛生器具だけでなく、洗面化粧台・キッチン・ユニットバスなど建築工事で設置する器具に給排水が必要なものが多くあります。
これらの配管接続位置はそれぞれの家具の仕様図を確認する必要があるため、設計図に明記されていない場合は建築に仕様書を要望していきましょう。
ユニットバスはスラブ下がり範囲や排水の接続位置の確認にも影響が出る他、ユニットバス下に配管を通さないといけない場合に、ユニットバスの脚を回避するようにルート検討する必要があります。
打診してもなかなか仕様が決まらず出てこない場合も多いですが、躯体や意匠的な納まりに影響が生じる可能性がある場合は、工程を把握しながら適宜打診していく姿勢が大切です。
マンションには駐輪場が設置されていることが多いですが、屋外に設置される場合に屋根があるタイプの場合は基礎が外構配管に影響しないかよく注意して検討しましょう。
大体意匠設計図の後ろの方に詳細図があるため、平面図に重ねておくことが大切です。
屋内に設置する場合、1階共用部分は天井下がりやPS要望など設備の納まり検討が影響する場合が多くあります。
特に二段ラックの場合は少しでも天井を下げると納まらなくなる場合もあります。
駐輪場の設置台数は計画時から制約がある場合も多いので、設備の納まりで設置台数に影響が生じる可能性がある場合は、早めに建築と設計・施主との協議確認を行うようにしましょう。
個人的には建物規模の大小に関わらず、半分くらいの確立で駐輪場設備と設備が何かしら納まり上で懸念対象になっている印象です。
意外と大事な注意ポイントだと思いますので覚えておきましょう。
8.お知らせ
2025年12月13日(土)に東京の大森にて「設備図面交流会」を行います。

前回同様、建築設備のCADや図面に関わる方向けの交流会となります。
図面屋さんに限らず、施工管理者や設計者・オペレーターさんなど、CADに関わる方であれば幅広くご参加いただければ幸いです。
今回は2部制として前半に技術交流会を行います。こちらも聞いてるだけや質問だけでも全然OKです。
参加をご希望される方は、HPの問合せからご連絡いただくか、または下記フォームから参加申請を登録いただければと思います。
★交流会参加申し込み専用フォーム★
https://forms.gle/woaTfowmp8L6Yq33A
技術交流会はオンラインでの参加も募集しています。
基本的に初めて参加される方や初対面の方がほとんどなので、お気軽に申し込みください。
前回もベテランさんの他にもオペレーターの方や設計関係者さんなど幅広くご参加いただいています。
もし交流会など不安がある方は主宰の松葉までお気軽に相談ください。私も実は苦手なので全力でサポートします。
設備勉強会の動画を毎週水曜日にYouTubeにて更新しています。
こんな内容のものを上げて欲しいなどご意見や感想もHPやYouTubeにコメントお寄せいただければ幸いです。
次回動画は「ArchiFuture2025について」を2025年11月19日(水)更新予定ですので、ご興味ある方は過去動画と合わせて是非ご視聴ください⇂
⇂⇂⇂YouTubeチャンネル「建築設備の図面屋さん」はこちら⇂⇂⇂
https://www.youtube.com/channel/UCQppktUn44lnEoW3DlrE7qg

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