株式会社PFC 代表の松葉です。
YouTubeチャンネル「建築設備の図面屋さん」の第18回勉強会は、衛生設備の心臓部ともいえる「受水槽」の周りについて解説しました。
受水槽は「置ければOK」ではありません。
将来の清掃や点検、そして防振対策など、図面1枚の検討不足が、後に大きな改修コストを招くことがあります。
今回は、現場で実際に起きている「べからず」事例を中心に、施工図屋が押さえるべき急所を紹介します。
目次
1.受水槽の基本と「2層式」の必然性

受水槽は、水道本管からの水を一時的に蓄えるための設備です。
一般的にはFRP製やステンレス製が主流で、容量は1日の使用水量の約半分(4/10〜6/10)を目安に設計されます。
実務のポイント:なぜ2層にするのか?
ある程度の規模になると、水槽の内部を仕切った「2層式」が採用されます。
受水槽は年に1回の定期清掃・点検が義務付けられていますが、1層式だと清掃中に「全館断水」が発生してしまいます。
2層式にすることで、片方を生かしたままメンテナンスができるため、病院や集合住宅など、水を止められない施設では必須の構成となります。
2.メンテナンススペース:図面上の「600」は罠?

国交省の基準により、保守スペースは「上部1m、周囲600mm以上」と決められています。
しかし、作図時にただ「壁から600」離せば良い、と考えるのは危険です。
施工図屋のアラート
機械室の壁には、後から「断熱材」や「吸音材」などの仕上げ材が貼られることがあります。
躯体(コンクリート面)から600mmで計画していると、仕上げ後の有効寸法が規定を下回り、検査で指摘を受ける可能性があります。
必ず建築の仕上げ仕様を確認し、余裕を持った離隔を確保しましょう。
3.受水槽上部の配管「禁止」ルール

「受水槽の上部に、給水管以外の配管を通してはいけない」 これは飲み水の安全を守るための絶対的なルールです。
特に排水管が上を通ると、万が一の漏水時に汚水が水槽内へ混入し、重大な健康被害を招く恐れがあります。
設計段階では他設備のルートが考慮されていないこともあるため、空調配管や雨水配管が受水槽を横断しようとしていないか、施工図検討の初期段階で必ずルートを整理してください。
4.可とう継手(フレキ)の支持位置:防振のセオリー

水槽と配管の接続部には、振動を遮断するためにフレキシブル継手(フレキ)を入れますが、この「支持の位置」を間違えると防振が台無しになります。
- 水槽〜フレキの間: 水槽と一体で動く必要があるため、「水槽側」から支持を取ります。
- フレキ以降: 振動を躯体に伝えないよう、「スラブ(地面)や基礎」から支持を取ります。
水槽から出た配管を、フレキのすぐ先で再び水槽に固定してしまうと、フレキが全く機能せず、振動が建物全体に伝わってしまいます。
5.定水位弁(FMバルブ)の選定と設置位置

水槽の水位を制御する定水位弁には「ストレート型」と「アングル型」があります。
- ストレート型: 床上などの低い位置に設置。
- アングル型: 水槽上部の立ち上がり部に設置。
ストレート型を採用し、二次側(水槽へ向かう管)の立ち上がりが2mを超える場合は、サイホン現象による逆流を防ぐためにバキュームブレーカーの設置が必要になることも覚えておきましょう。
6.給水のタッピング位置:死に水を作らない

受水槽への「入水」と「出水」は、対角線上に配置するのが理想です。
入り口と出口が同じ側に寄ってしまうと、水槽の奥側の水が流動せず「死に水」となり、塩素が抜けて細菌が繁殖しやすくなります。
新鮮な水が常に循環するルートを図面で表現しましょう。
7.吐水口空間:自治体ごとの基準を確認

給水管の末端とオーバーフロー管のあふれ縁の間には「吐水口空間」が必要です。
この必要寸法は管径や壁からの距離によって変わり、さらに各自治体(水道局)によって独自の基準を設けている場合があります。
作図前に必ず該当地域の基準を確認してください。
8.排水口空間:間接排水の徹底

オーバーフロー管や水抜き管を排水管へ接続する際は、必ず「間接排水」にします。
- 排水口空間: 排水管の直径の2倍以上(かつ150mm以上)の空間を空けます。
- 防虫網: 虫の侵入を防ぐために網を設置します。
これらは、下水の詰まりや臭気が受水槽へ逆流するのを防ぐ「物理的な遮断」としての役割を持ちます。
9.排水弁の選定:バタフライ弁はなぜNGか

水槽の水抜き管(排水弁)に、バタフライ弁(BV)を使用してはいけません。
バタフライ弁は片側にしか圧力がかかっていない状態(片圧)では止水性が不十分で、じわじわと漏水する原因になります。
ここには必ずゲートバルブ(GV)やボールバルブを選定してください。
10.バタ弁とフレキ継手:メンテナンス時の脱落防止

受水槽の出口側にバタフライ弁を設ける場合、フレキ継手と直結する収まりは避けましょう。
フレキと直結してしまうと、将来フレキを交換するためにボルトを外した際、バタフライ弁自体が脱落してしまい、水槽の水を止められなくなります。
弁とフレキの間には必ず「短管」を1本入れる。 これがメンテナンスを考慮したプロの作図です。
11.まとめ:図面1枚で「数年後のメンテナンス」を変える
受水槽周りの検討は、ただ配管をつなぐだけではなく、数年後の清掃や部品交換のしやすさまで想像して描く必要があります。
「なぜここに空間が必要なのか」「なぜこの弁ではいけないのか」というエビデンスを理解し、現場で職人さんに説明できるような図面を目指しましょう。
12.お知らせ
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