YouTubeチャンネルにて『勉強会動画③』をアップロードしました。
今回は「ダクト設備」の基本編として、ダクトや制気口の選定に関する基本的な設備知識が中心となります。
動画内で説明している内容の補足をスライド毎に簡易的に解説します。
内容は業界経験2年~5年生あたりが対象となります。
目次
ダクト設備
1.ダクトの種類


高層ビルや大型施設では当たり前にある角ダクトですが、小さなテナント施設やマンションでは使われいこともしばしば。
作図自体は比較的簡単ですが、このフランジの部分を見落として施工ミスをする場合があります。
特にスリーブを通す際は角ダクトのフランジサイズを考慮せずにダクトサイズ+50mmなどで選定すると施工できなくなる場合も。
実際はフランジを加工すれば施工自体は可能ですが、知らないと見落とすため要注意です。


特にTFASユーザーはフランジ割は切断などで作図しないと自動的には出てこないため作図していない方も多いかと思います。
ダクトの製作図にはこの割が必要になるため、ダクト屋さんはデータをもらって加工図に仕上げたり、手書きで割りを検討したりしています。
CAD上で手作業で作図していくのは手間ですが、フランジの部分からは分岐取出しが出来なかったり、短すぎる短管は製作できないなど問題も生じる可能性があります。
特に梁下でダクトをギリギリに納めている場合に、フランジ割を梁下で製作して納まらない・・・なんてトラブルも。
そういったトラブル防止のためにも、施工図作成時にフランジ割を意識して作図することが理想です。
そしてどの継手を使用するのかは、設計図というよりはダクトの施工要領で方針をまとめていきます。
乗り込み時は決まっていないことが多いですが、施工図として寸法を入れる段階くらいで継手の方針を確認し、割付けを記入するのがいいタイミングです。
Rebroは「自動割付」機能があり、作図しながら割付が表示される他、ダクトの取り回し変更後に「割付の一括修正」も可能です。
ダクトの製作面を考慮するとRebroはその点かなり優秀ですね。

丸ダクトは特に「25mm単位で作図するかどうか」を確認しましょう。
種類が多いと現場で材料管理が結構大変なんです。
特にダンパーなどは数があれば使い回しもできるので、管理上の観点を重要視することが大切です。
また何でもかんでも丸ダクトにするのも良くない場合と、角ダクトをほとんど使用しない現場では極力丸ダクトで選定する場合もあります。
ピットにダクトを通す場合はスリーブ貫通が基本のため大口径の丸ダクトを使うことが多いです。
このあたりも施工性や納まりなど多角的な判断が必要になりますが、とにかく「ケガのリスクを避ける」というのは作図の上でもとても大事な観点です。
「施工しやすい・加工しやすい・搬入しやすい」などのポイントから判断していきましょう。


材質の仕分けが屋外か屋内かだけであれば、図面上もそれほど気にしなくて大丈夫です。
しかし、高温高湿のダクトにステンレスを使用したり、実験排気に塩ビライニングを使用したりと、
研究施設や病院施設などでは特に特殊なダクトを使用するケースが増えます。
色分けをし過ぎてもわかりづらくなる場合は、そもそも作図系統を仕分けして記号を変更し、ダクト凡例に材質を表現するのも一つの方法です。
とにかく「設計図を見ないとわからない」状態の施工図が一番良くないです。
職人さんは施工図しか見ないものとして、極力表現しておくよう心掛けましょう。

図面上の表現でアルミフレキと保温付フレキはしっかり意識して描き分けしましょう。
種類を知らずに「どっちでもいいか」と種別を分けずに作図する図面を見かけます。
職人さんは図面で表現されたもので発注してしまう可能性があるため、保温が必要な系統かどうかをしっかり把握して作図しましょう。
逆に「すべて保温付なら問題ないだろう」も、無駄にコストがかかるので要注意です。
2.ダクトの設計

ダクトに限らず、基本的な設計基準は存在しますが、特にダクトはこのルールが設計や施工者により微妙に変わる印象です。
特に1.0Paをギリギリで守るかどうが。
「風量が変わって1.05Paになった。端数だしいいか」「1.05Paは1Paを超えてるからサイズアップだ」
こんな判断を皆さん独自に行っています。
確かに0.05Pa上がって風が出なくなる例は稀だと思いますが、それを個人の判断で許容すると最終的に「どこまでアリ?」となってきます。
特に若手社員やCADオペの方に作図指示をする場合は、この”微妙なルール”に常に困惑します。
できればきちんと表にしてルールを決めて共有するようにしましょう。
過去のブログで『ダクトサイズ選定の早見表』を記事にしていますので、興味ある方はご参考に。


昔はアナログのダクチュレーターを使っていたそうですが、今はCAD付属のダクチュレーターかダクトチェッカーを使用します。
そしてダクチュレーターの精度がそれぞれ微妙に異なると聞いたことがあります。
ダクトチェッカーの方が正確だからそれを使うように指示されることもあるそうで。
と言っても大幅な違いはないと思うので、まずはダクチュレーターを使いこなせるようになることが設備屋の第一歩です。


本当にパスダクトのサイズ選定は要注意です!
大手設計会社が作図した大型現場。それでもパスは風速を考慮していない、なんてこともよく目にします。
ダクト側でサイズアップが厳しい場合は、パスダクトに渡る系統のFANにパスダクト分の静圧を持たせることでクリアする考え方もあります。
ただ少なくとも制気口2個分とダクト長の静圧が加算されるため、設計で見込んでいない場合はFANの静圧が上がり機器サイズアップの可能性も高くなります。
そして風量測定時に風が出なければ、たとえ設計図が悪くても施工者に責任が問われるケースが多いと思います。
測定した後での是正はものすごいリスクです。
きちんと質疑をして「ダクトか機器を大きくするなら追加費用、やらないなら風が出なくても施工者に責任はない」と議事録にきちんと残すことが施工者自身を守る大事な行動です。

「建築設備設計基準」によると、排煙ダクトの選定の欄には「ダクト内風速は、20m/s以下とし、サイズ選定は、等速度法又は等摩擦損失法による。」とだけ記載されています。
この基準だけをルールとするのであれば、設計図よりもダクトサイズを小さくできる可能性は高くなります。
設計図によって選定基準は変わりますが、設計は基本的に「安全率」を考慮しているため、ギリギリ20m/sで設計されている図面はほとんどありません。
根拠をきちんと提示した上で、納まりを考慮しダクトサイズを小さくすればVEとして認められる場合もあります。
3.制気口設計

絵でもありますが、VHとHVは形状が似ていて異なることに注意しましょう。
縦横が1:1でない形状の場合は発注時に注意です。
正方形であれば向きはどちらでも設置できるため、天井制気口は問題ない場合は極力正方形にしましょう。


ボックスは「あとで一気に修正しよう」という考えで、いったん設計図で描いちゃうパターンが多いです。
それもいいのですが、どの設計図でも大体は大きく選定されているので、可能なら早めに質疑しちゃいましょう。
ただ、確実にVEするためにはいくらか追加要素が出てきてから提案すると話を通しやすい、というのもあります。
コスト面では確実にマイナスになる内容なので、取っておきたいという考えもあります。
難しいですね。
私は最初にぶつけてみて、断られても追加が増えたときに再度提案します。
修正や検討コストも考えて”攻めの提案”も時には大切です。




「風量以外は風量からすべて割る」「風量はすべてを掛ける」と覚えましょう。
計算するときに頭の中で混乱するのが、単位合わせと割る順番です。
単位合わせは考えるとわからなくなる人は、とにかくルールで覚えちゃいましょう。
mmとmを合わせる。時間と秒を合わせる。
今はエクセルで全部計算してくれます。大事なのは計算力ではなく考え方を理解することです。
風量=面積x風速で計算できます。同じ速さならダクトがでかい方が風量は大きいし、同じダクトなら風速が早い方が風量は大きくなります。
制気口サイズを選定する場合はこれを入れ替えて 面積=風量÷風速となります。
この時に、制気口は網目があるので開口率が影響します。それを割るだけです。
単位合わせは、風量はm3/hで時間単位、風速はm/sで秒単位のため60秒×60分で3600が出てきます。
風量も風速もmですが、制気口はmmのため1000が出てきます。
公式を全く覚えてなくても、これらを忘れなければ電卓一つあれば制気口サイズはすぐに求められます。
計算が苦手な方も、苦手意識にとらわれず一度チャレンジして計算できるようになりましょう!
動画の内容とはまた違った側面で記事を書いていますので、動画と合わせてご確認いただければと思います。
次回動画は「ダクト設備 作図編」を2025年10月1日(水)更新予定です。
この度、YouTubeにて「建築設備の図面屋さん」チャンネルを新規開設いたしました。
https://www.youtube.com/channel/UCQppktUn44lnEoW3DlrE7qg

このチャンネルでは、建築設備の勉強会、設備CADの操作知識、資格試験の解説に関する動画などを公開していく予定です。
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