株式会社PFC 代表の松葉です。
現役の設備図面会社の社長が、資格の勉強だけでなく実務にも使える2級管工事の基礎講座をYouTubeチャンネル「建築設備の図面屋さん」にて毎週更新しています。
今回は、機械工学の基礎となる「換気・排煙」編の動画を公開しました。
このブログ記事では、動画で使用しているスライドをすべて掲載し、さらに分かりやすく解説していきます。
試験対策の復習や、実務での図面検討のポイント確認にぜひご活用ください!
目次
1.換気とは

まず、換気の定義です。換気とは、単純に「室内の空気と外気を入れ替えること」と定められています。
動画でもお話ししましたが、「空調」と「換気」は役割が異なります。
- 空調(エアコン): 主に室内の空気を循環させ、温度や湿度を調整する。
- 換気: 外気(新鮮な空気)を取り入れ、汚れた室内の空気を屋外へ排出する。
つまり、一般的な家庭用エアコンや天井カセット型エアコンを運転しているだけでは、空気は循環していても、換気(外気との入れ替え)は行われていません。そのため、窓を開けるか、換気扇などの設備が必要になります。
換気の方式には、大きく分けて自然換気方式と機械換気方式の2種類があります。
2.自然換気方式:風と温度の力を利用する

自然換気方式は、送風機(ファン)などの機械を使わず、自然現象を利用して換気を行う方法です。これには「風力差」と「温度差」を利用する2つの方法があります。
- 風力差: 建物に当たる風の圧力を利用します。窓を開けた際、風が強い日にはよく換気されるのがこの仕組みです。
- 温度差: 室内と外気の温度差(による空気の密度差)を利用します。
実務のポイント:温度差換気のプロット
温かい空気は軽く、上方へ移動する性質があります。したがって、温度差を利用して効果的に換気を行うには、スライドの図にあるように「給気口を低い位置に、排気口を高い位置に」設置するのが鉄則です。
これは試験でも問われる基本的な考え方ですし、実務においても非常に重要です。例えば、高天井の温泉施設などで、足元にガラリ(給気口)があり、高い位置に窓や開口部(排気口)が設けられているのは、この温度差換気の原理を利用しているからです。
3.機械換気方式:1種・2種・3種の分類

機械換気方式は、送風機(ファン)を使用して強制的に換気を行う方法です。給気と排気のどちらに機械を使うかで、第1種〜第3種に分類されます。
| 種類 | 給気 | 排気 | 特徴と主な設置場所 |
| 第1種換気 | 機械 | 機械 | 給排気とも機械で行うため、最も高性能で確実。事務室、会議室など。 |
| 第2種換気 | 機械 | 自然 | 室内を正圧(陽圧)に保ち、外部からの汚染空気の侵入を防ぐ。手術室、クリーンルーム、ボイラー室など。 |
| 第3種換気 | 自然 | 機械 | 室内を負圧(陰圧)にし、室内の臭気や湿気を外部に漏らさない。トイレ、喫煙所、浴室、厨房など。 |
試験対策としては、どの場所でどの換気方式が使われるか、その理由(正圧にしたいか、負圧にしたいか)を合わせて覚えるのがポイントです。
4.換気方式の例(図面での検討)

実際の平面図を元に、換気方式がどのように計画されているかを見てみましょう。
- 事務室(左側): 全熱交換器(給排気を行う1台の機械)が設置されており、第1種換気です。
- 会議室(右下): 天井扇(排気ファン)とシロッコファン(給気ファン)がそれぞれ設けられており、これも第1種換気です。
- トイレ(右上): 天井扇(排気ファン)のみがあり、ドアのガラリ(DG)から廊下の空気を取り入れる計画のため、第3種換気です。
図面屋さん(施工図検討)の視点
特に第3種換気を行う部屋(トイレなど)においては、「排気ファンだけあっても、給気の経路がなければ換気は成立しない」ということを常に意識する必要があります。
図面を検討する際は、扉にガラリ(ガラリ)やアンダーカット(扉の下の隙間)があるか、あるいは天井内にパスダクト(空気を通過させるダクト)が計画されているか、といった「給気のルート」が適切に設計されているかを確認することが、図面屋としての重要な役割です。
5.その他の換気方式:局所換気とエアカーテン

部屋全体を換気する「全般換気」に対し、特定の汚染源付近で換気を行う方法もあります。
- 局所換気: 汚染源(臭気、煙、有害ガスなど)のすぐ近くで捕集し、排出する方式です。厨房のフード、工場の作業場、実験室のドラフトチャンバー(スライド右上の写真)などが該当します。
- エアカーテン: 百貨店や大型の冷蔵倉庫の入口などで、風の壁(カーテン)を作る設備です(スライド右下の写真)。これにより、扉を開け放していても、外部の汚れた空気の侵入を防いだり、内部の冷気が逃げるのを防いだりします。
6.誘引誘導換気方式

広い空間において、端から端までダクトを配管するのが難しい場合などに採用される方式です。
送風機で外気を取り入れ、空間内に配置した「誘引送風機(誘引ファン)」でその新鮮な空気を高速で拡散・搬送し、反対側の排気送風機で排出します(スライドの図と写真はテラル株式会社様の例)。大型の倉庫や体育館、地下駐車場などでよく使われます。
7.ファンの位置:ダクトの末端側が理想

排気ファンをダクト系統のどこに設置するか、という施工図検討において非常に重要なポイントです。
原則として、排気ファンは「ダクトの末端側(外壁に近い側)」に設置するのが理想です。
なぜか?(正圧と負圧のリスク)
ファンの吸込側と吹出側(吐出側)では、圧力の状態が異なります。
- 吸込側: 負圧(周囲より気圧が低い=吸い込む力)
- 吐出側: 正圧(周囲より気圧が高い=押し出す力)
ダクトが正圧になっている部分(吐出側)が長いと、ダクトの継ぎ目などから汚れた排気が室内に漏れるリスクが高まります。したがって、正圧部分である吐出側のダクトを極力短くするために、ファンを外壁近くに設置するのがセオリーです。
ただし、メンテナンス性も考慮する必要があります。例えばトイレのファンをトイレ内の天井内に置いた方が管理しやすい場合もあります。実務では、この理想(外壁近く)とメンテナンス性、収まりを総合的に判断して設置位置を決定します。
8.ボイラー室の換気

ボイラー室の換気は、機器のタイプによって注意が必要です。
- 開放式ボイラー: 燃焼に室内空気中の酸素を利用します。そのため、部屋の換気だけでなく、ボイラーが燃えるための「燃焼空気」を確保する換気設備が必要です。第2種換気(給気機械)または第1種換気が適しており、第3種換気(排気機械=室内が負圧になる)は燃焼不良の原因となるためNGです。
- 密閉式ボイラー: 燃焼空気を直接屋外から取り入れるため、部屋としての燃焼空気のための換気設備は不要になります。
試験では、ボイラーのタイプと燃焼空気の要否、適した換気方式の組み合わせがよく出題されます。
9.その他のポイント解説(設計上の注意)

最後に、設計・施工図検討における重要なポイントを2点解説します。
- 汚染源が異なる部屋の排気は独立させる 臭気や燃焼ガスなど、汚染源の性質が異なる部屋の排気を、同じダクト系統(同一系統)にまとめてはいけません。例えば、トイレの排気と事務室の排気を一緒にすると、トイレの臭気が事務室へ逆流する可能性があります。厨房排気なども含め、これらは原則として「単独系統」として計画します。
- 開放式燃焼器具のある台所の換気量低減 ミニキッチンなどで開放式の燃焼器具(ガスコンロなど)がある場合、ただ天井に換気扇を付けるよりも、適切な「排気フード」を設けることで、必要な換気量を低減(少なく)することができます。フードが汚染源を囲むことで、少ない風量でも効率よく排気ができるためです。
10.燃焼器具(厨房など)の換気計算

厨房などの換気量を決める計算式には、いくつかの条件があります。
スライドにある式は難しく見えますが、大事なのは「定数(決まった数字)」と「機器ごとの数値」を掛け合わせるという考え方です。
- K(理論排ガス量): 燃料ごとに決められた単位数値です。
- Q(燃料消費量): その厨房器具がどれくらい燃料を使うか、機器ごとに定められた数値です。
フードの形状で変わる「定数」
ここで注目すべきは、数式の前にある 「40・30・20」 という数字です。これはフードの有無や形状による係数です。
- フードなし(40): 煙を囲うものがないため、最も大きな換気量が必要になります。
- 1型フード(30): 一般的な箱型のフード。よく見かけるタイプですね。
- 2型フード(20): 山型のフード。1型よりも汚染源を効率よく囲えるため、計算上の換気量をさらに減らすことができます。
実務では、意匠(見た目)の問題で箱型の1型を使うことが多いですが、どうしても風量を抑えたい場合には山型の2型を検討することもあります。
11.フードの形状と設置のポイント

先ほどの「1型」と「2型」の形状の違いを詳しく見てみましょう。
- 1型(箱型): 火元からの距離が150mm程度と近くても設置可能です。
- 2型(山型): 火元から1/2H以上の距離をとるなど、より広く大きく囲う必要があります。
山型(2型)の方が風量を少なく済ませられるメリットがありますが、その分、設置スペースを大きく占領してしまいます。「収まり」を重視するか、「ランニングコスト(風量)」を重視するか、設計時の判断ポイントになります。
また、最も風量を少なくできるのは「4番:直接煙突につなぐ方式」です。屋外へ直接排出するため、部屋全体の換気負担は最小限で済みます。
12.給気口・排気口の開口計算

最後に、実務でも試験でも非常に重要な「開口面積の求め方」です。
スライドの左側にある公式を覚えるのも良いですが、迷ったときはこう覚えてください。
「求めたい面積(A)を出すには、風量(V)から必要な情報を全部割っていく!」
計算のステップ
- 3600で割る: 風量の単位(m3/h)を、風速の単位(m/s)に合わせるための処理です(60秒×60分)。
- 有効開口風速(v)で割る: どれくらいのスピードで空気が通るか。
- 有効開口率で割る: ガラリの羽根などで塞がっていない「実際に空気が通れる割合」です。
有効開口率の目安
- ガラリ: 35% 〜 50% 程度(半分以上は羽根で塞がっているイメージ)
- レジスター(給排気口): 75% 〜 80% 程度
実際の設計ではメーカーのカタログ数値を確認しますが、試験では「何が必要な情報か」を問われます。風量、風速、開口率。これらを順番に割っていけば、必要な面積が算出できます。
13.換気編のまとめ
ここまで、換気の基礎から計算までをざっと解説してきました。 倉庫、病院、学校など、建物の種類によって特殊な換気設備が登場することもありますが、まずはこの「基本のキ」をしっかり押さえておきましょう。
次回は、より専門的な「排煙設備」についてお話しします。
命を守るための設備ですので、換気とはまた違った重要なルールがたくさん出てくるためしっかり抑えておきましょう。
14.YouTubeチャンネル「建築設備の図面屋さん」
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